1. IIDA top >
  2. 会員のお仕事 >
  3. vol.5T邸第1回〜アートギャラリーのような家

会員のお仕事

Designer’s House / Designer’s Project
デザイナーの住まい・仕事 vol.5

アートギャラリーのような家  T邸 第1回

IIDA Japan Chapterメンバーの住まいや手がけた物件を紹介するDesigner’s House/Designer’s Project。
今回は、都内の住宅街に建つT邸をご紹介します。

text & photographs: Eriko Hosoi
photographs : Keiko Ushiyama
Ikuyo Takakuwa

都内、街道沿いにある駅前の商店群。活気ある商店の中を通るように続く私道を抜けると、初夏の日差しを浴びて豊かな表情を見せる木々の緑とグレーの外観が印象的な建物が目に飛び込んできます。古くは江戸時代に宿場町として栄えた板橋宿があった場所からほど近いその街に、築60年以上経っていたという古い日本家屋から現在の家に建替えたのが2000年の6月。約12年前のことです。設計は当時からTさんと一緒に数々のプロジェクトに携わってこられた久保木保弘氏。

木の温もりと長く愛されるデザイン

敷地に一歩脚を踏み入れると、色とりどりの花々と豊かな庭木が来訪者を出迎えます。そして玄関まで続く敷石の小道を辿ると、そこには見る者が思わず微笑んでしまうような、ふくよかな表情を持つ小さな愛らしい石像達が佇んでいます。建物に入る前から人の気持ちを和ませてくれる家、それがT邸です。

T邸の大きな特徴の一つ、それは長く使える愛されるデザイン・設計であるということ。
まず間取りの面では、この家はTさんとお姉様のご家族が共に住む多世帯住宅であるということ。そして遠方に住む高齢のご親族も同居出来るよう配慮した予備室と水回りの設置。家族の将来を見据えたバリアフリーな住まいということです。次に内装デザインの面。ここでは飽きのこない日本の風土にあった自然素材を多用しています。床や壁面、天井材にナラ材を用い、建具や造作部には木目の美しいタモの柾目材を使用。1Fのリビング・ダイニングの壁には珪藻土漆喰を施し、見た目にも環境としても自然を身近に感じられるデザインになっています。ちなみにこの珪藻土漆喰、最初の数年は珪藻土内に棲むバクテリアの働きで壁面に付いたシミを分解して消してしまっていたそうです。

では中をご紹介していきましょう。玄関の扉を開けるとそこは大きな階段室。3階まで続く大きな吹き抜け空間には上階から光が差し込みます。正面にはホームエレベーターも。1Fにはお庭と広いウッドデッキとの繋がりが心地よい、広々としたLDKがあり、2Fと3Fがプライベート空間になっています。

LDKはタモ材の格子戸が空間のアクセントとなり、ナチュラルモダンな空間が広がります、家族が食事や団らんのひと時を和気あいあいと過ごしている姿が目に浮かぶような心地よい空間です。お料理やガーデニングが大好きなお姉様の城でもあるキッチンからは緑豊かな庭が正面に望めます。そしてさりげなく置かれた古い道具類。以前の住まいで使用していた物や物置に眠っていた古道具が素敵なインテリアクセサリーとして空間のアクセントとなっています。

T邸の次なる大きな特徴。窓辺やカウンターを飾る様々なアートや置物たち。住む人や来客の目を楽しませる装飾品の数々を次にご紹介します。

次回は『姉妹で楽しむ ーギャラリーのように飾る喜びー』をお送りします。


建物外観とお庭



庭木と表情豊かな石の置物

玄関収納と飾り棚




明るい玄関と玄関ホール、3階まで続く明るい階段室
蹴込みのない階段からは上階からの光が注ぐ


リビング・ダイニング
美しい木目と珪藻土漆喰の柔らかい白い壁が心地よい

ダイニング側からキッチンを望む



リビングと庭をつなぐテラス

珪藻土漆喰の壁面

和室のケナフのクロス(天井)

リビング・ダイニングのアクセントになっている格子戸

造作家具も木の温もりを大切に
キッチンの引出し 取っ手にも遊び心が光る



リビングに置かれた古い長火鉢や炬燵櫓(こたつやぐら)はサイドテーブルとして活用


3Fの和室にも昔家族が使っていた古い道具類を飾って楽しんでいる
INDEXに戻る

ページ上部に戻る