活動報告
IIDA Japan Chapter 30th anniversary event
NIPPON DESIGN
IIDA Japan Chapterが考えるNIPPONの新しいカタチ
(2013.8.1)

IIDA Japan Chapterでは、「これまで」と「これから」を結ぶ新しい“NIPPON DESIGN”を求めて、日本の美しい素材や技術に新たな視点を加えて未来の住まいのカタチやデザインの新しい姿を模索する試みをはじめました。
今回のイベントでは、IIDA Japan Chapterのこれまでの活動内容をご紹介するとともに、IIDA Memberが考える “NIPPON DESIGN”をご紹介していきます。
会期:2013年7月4日(木)〜7月16日(火)(水曜休館)
場所:リビングデザインセンター OZONE 7Fリビングデザインギャラリー
主催:IIDA Japan Chapter(国際インテリアデザイン協会 日本支部)
協力:一般社団法人 日本襖振興会 株式会社プロジェクトエフ
リビングデザインセンター OZONE
協賛:Fプロジェクト加盟店会 株式会社 宇野紙店 からかみ屋 株式会社 菊池襖紙工場 有限会社 静岡フスマ商会 株式会社 太陽 株式会社アイデック 朝日ウッドテック株式会社 株式会社イオニア 一吉(有限会社湯島アート) 株式会社木曽アルテック社 株式会社 添島勲商店 株式会社テシード有限会社 豊田木工所 マナトレーディング株式会社
【イベントの3つの柱】
- NIPPON DESIGN COMPETITION
- IIDA Japan Chapter Selection「和の意匠100選 2013」
- The Pride of NIPPON
1.NIPPON DESIGN COMPETITION
「20年後も愛される NIPPON DESIGN」の切り口で、襖にまつわる企業の連合体である「Fプロジェクト加盟店会」や一般社団法人 日本襖振興会の協賛、協力のもと実現した「これまで」と「これから」を結ぶ、新しい“和”の素材を使用した居室の提案コンペティション。
このコンペティション開催の目的は、大きく2つあり、一つは襖紙や引手など襖部材を従来の襖以外の使用法も視野に入れ、現代のライフスタイルに合った和室に限定しない、魅力的な使い方を広く求めるものです。また、もう一つは、建築家やインテリアデザイナー、コーディネーターは、実はあまり襖の商材について知り得ていない現状を危惧し、多くの魅力的素材が存在することをこのコンペを通して知ってもらう機会にすることでもあります。
2013年5月1日よりIIDA WEB上で広く作品募集がされ、5月27日に厳正なる審査の結果、最優秀賞に細井絵理子氏の「紙風船 KAMI FUSEN ROOM」と日本襖振興会特別賞に戸室令子氏の「居心地(IGOKOCHI)」が選ばれました。尚、両名ともにIIDA Japan Chapterのプロフェッショナルメンバーです。参照:IIDA WEB受賞者発表(審査員名も記載されてます)http://www.iida-japan.jp/activities/2013/activities201307.html
最優秀賞に関しては、イベントスペースに再現ブースが設置され、コンセプトである「包まれる優しさ」を実際の襖紙と竹の骨組みを用いて「紙風船」スペースを再現。現代のライフスタイルに合う、小家族化の進む現代人のライフスタイルの時間軸にあわせ、クッションを置けばリビングになり、台を置けばダイニングに。子供が生まれれば、遊び場(秘密基地に)。そして布団を敷けば天蓋付きの寝室になるというフレキシブルな空間を提案しています。また、襖紙を市松重ね貼りにすることで壁紙として使用し、襖の引手を壁面の装飾として使用するなどの試みも提示されました。
2.IIDA Japan Chapter Selection「和の意匠100選 2013」
コンペティション開催で協賛各社から提供された様々な見本帳やサンプル。これらをデザイナーや建築家は通常、すべて事務所に置いてはいません。流通や業界の古い慣習など様々な理由から「置きたくても置けない」という現状があります。つまり、素敵な色柄の襖紙や和紙壁紙が日本には存在しているのに、知ることが出来にくい(一部しか知らない)という現状がありました。そこで、このイベントを機に、Fプロジェクト加盟店会の協力により、今回、業界のしきたりに風穴を空ける見本帳の新しいカタチが、IIDAとのコラボレーションで実現しました。それが「和の意匠100選」です。協賛企業各社の見本帳や別注見本の紙の中から、「今すぐ使いたくなる紙100」をIIDAのメンバーがセレクションし、メーカーの枠組みを超え、新たな通し品番を付けてまとめました。
セレクションに際しては、襖紙としてだけの需要に縛られず、壁紙やアートパネルへの使用も視野に入れ、現代のライフスタイルや住環境にマッチするものが厳選されました。見本帳の構成では、「優」「涼」「侘」「粋」「雅」「地」のカテゴリーに分類し、デザイナーやエンドユーザーが色柄を選びやすいよう工夫もしてあります。また、今回のコンペを通して、襖紙の「別注(オーダー)」を知らないプロも意外と多いことが判明。そこで、企業のオリジナルの和紙製作についても紹介するコーナーを設け、100選で選ばれた和紙を用いて、ランプシェードに見立てたディスプレイを会場にするなどして、100選の和紙の魅力を伝えました。
3.The Pride of NIPPON
日本の“誇れる”伝統的素材や加工技術に注目し、新しい切り口で「これからのデザイン」を提案した企画です。ここで紹介するプロダクトは一例でしかありません。産地やメーカー、工房を訪ね、職人さんたちとIIDA メンバーがコラボレーションして生まれたデザインです。20年後も愛されるこれからのNIPPON DESIGNを求めての新たな第一歩となる試みです。
- 畳 + インテリアファブリック
- 組子 + インテリアファブリック
- 漆 + 椅子 漆 + ガラス
- 襖紙 加飾技術 + 下地クロス紙
- 左官技術 + スイッチ・コンセント プレート
- 世界に発信する日本デザイン、日本製作の新作壁紙
1.畳 + インテリアファブリック
アメリカのインテリアファブリックメーカー大手の「クラベット」の生地と、畳の新しい可能性を積極的に探り様々なインテリア雑貨を発表している「添島勲商店」のTATAMIST素材を組み合わせたインテリアラグ。IIDAメンバーがトリム幅や縫製方法を職人さんたちと協議、デザインし生み出した畳素材の新作ラグです。屋内用と屋外用の2種を製作。屋外用はクラベットの耐光性、耐水性に優れた生地を用い、お花見やピクニックに使えるワンランク上の「花見ラグ」としてデザイン。若い人の間で流行しているという「野点」や「茶ガール」をイメージし、同素材で作るピクニックバスケットやクーラーバッグも考案しました。
2.組子 + インテリアファブリック
真壁や和室の減少で欄間に使われていた組子技術が存亡の危機をむかえています。組子は大変な技術と木曽桧が持つ素材の美しさ、デザインの豊かさが魅力の、忘れ去るには惜しすぎる素材です。そこでIIDAメンバーが組子の産地の一つである栃木県の鹿沼の豊田木工所をたずね、新たなインテリアエレメントになるよう、様々なアイデアを出し合い、新たなプロダクトを生み出しました。
一つは、インテリアファブリックと組み合わせたウインドウパネルの提案。カーテンでも障子でもない、新たな窓辺の意匠としてデザインされ、透過性のある生地バージョンと着脱可能なジムトンプソンの新作柄で作られたパッチワーク柄との2種を発表。モダンやポップなインテリアイメージにも合う、新しい組子のスタイルを生み出しています。また、着彩はしないという昔からの組子のルールを破り、着彩を施したかわいいコースターや、組子の技術を用いて杉材で正20面体のキューブを作り、ランプシェードにしたものなど、IIDAとのコラボで幾つかの新プロダクトが誕生しました。
3.漆 + 椅子 漆 + ガラス
漆を建材に…という試みは、今回協賛してくださった木曽アルテック社や、作品監修でご協力いただいたDucoでもすでに発表されていますが、更なる進化や可能性を探るべく、幾つかの試みを行いました。その一つが、アイデックのVIENNAシリーズの椅子を漆で着彩するという試みです。ヨーロッパで生み出されたデザインの曲げ木の椅子をヌード(無着彩)状態でアイデックよりご提供いただき、漆の床材や壁装材で知られる木曽アルテック社とコラボして、夏の夜に打ち上がる「花火」をモチーフに塗っていただきました。通常の家具で用いる塗料では出ることのない、押さえた光沢と色の深みが特徴です。
ガラスに漆や箔を施す技法は作品監修の(株)Ducoさんのオリジナルです。今回はIIDAメンバー数名が工房を訪ね、その技法を学びながら作品作りにチャレンジしました。初めての作品ながら、丁寧なご指導のもと、個性ある美しい作品が作れました。
4.襖紙 加飾技術 + 下地クロス紙
印刷技術が発達する前は、この「加飾」技術が襖紙の装飾技法として当たり前でした。
現代も受け継がれるこの多様な加飾技術を、この展示では既製品の壁紙に施すなどして、
新しいインテリアの仕上げ法として紹介しています。
テシードで取り扱っている、イギリス製の「下地クロス」。レリーフ調のこのクロスには、通常ローラーでペンキが塗られ仕上げられます。が、今回はその下地クロスに襖紙の加飾技術の中の「刷毛引き」と「色染本銀梨地膠仕立」の2種の方法で加飾が施され、大胆でポップな仕上がりになりました。この仕上がりには、業界関係者から早くも驚きの声とその技術の素晴らしさに問い合わせも多数来ています。また、本来の襖紙に加飾する手法も、今回「一吉和紙」というブランド名で新たに新作をIIDAメンバーの意見を取り入れ、製作していただきました。これらは、壁紙やアートパネルにも活用出来るオリジナル和紙として注目されています。
5.左官技術 + スイッチ・コンセント プレート
左官技術も忘れてはならない日本の大切ない技術の一つです。そこで今回、IIDAメンバーの発案で、我々デザイナーがその選択範囲の狭さにいつも嘆いているスイッチやコンセントプレートの仕上げ加工として左官技術を施しました。漆喰やモルタルの金ゴテ仕上げなどを試み、今回、建築家などの来場者にも評判の仕上がりとなりました。
6.世界に発信する日本デザイン、日本製作の新作壁紙「ライトキューブ」
ヨーロッパなどで活躍していた日本人デザイナー2人組の「ライトキューブ」と輸入クロスやファブリックで知られるテシードが6年がかりで生み出した、純国産のインテリア壁紙「LIGHT CUBE」を今回、この「The Pride of NIPPON」で紹介しました。日本人デザイナーによるデザインと、日本の高い技術をもつ工場で作られた国産クロスは、世界をターゲットに企画生産され、今年1月にハイムテキスタイル展で発表されました。企画者のテシードの江面社長に伺うと、あえて「日本らしさ」を強調した色柄は採用せず、既に海外で実績のあるデザイナー2人組「LIGHT CUBE」のデザイン力と高い日本の技術力で世界にない新しいデザインを生み出したとのこと。ヨーロッパやアメリカ、南米などで代理店契約が進むなど、既に大きな反響を呼んでいます。その美しい色合いや大きな柄リピートは、日本規格である幅92センチというサイズであることが最大限に活かされ、他国にない大きな特徴にもなっています。海外での反響の声として、デザイナーの日本で育ってきた原体験が影響しているのか、外国人にわかりやすい「和柄」は使われていないにも関わらず、その色使いやアシンメトリーな柄配置に日本らしさを感じると言われることもあったそうです。
デザイナーの木村氏に話を聞いたところ、今回のNIPPON DESIGNで展示した一柄に日本的なモチーフがインスピレーションソースになっているとのこと。その柄のイメージのもとは、七夕の折り紙に切り込みを入れて作った紙飾り。ランダムに舞い落ちる紙のような曲線は、その子供の頃の記憶がベースになっているそうです。これは日本人だから「なるほど」とわかること。一見すればそれは美しく交差するリボンのようにも見えます。
このように新しい感覚と技術で作られたデザインは、テキスタイルにも用いられ、現在、洋服やバッグ、ノートなどのステーショナリーにまで商品化が進み、同柄の様々なアイテムが展開しています。
