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会員の視察・旅行記

吉田亜希子のUSA JOURNAL 2016年2月号(2016.2.1)

1月末、日本にも大寒波が来て沖縄にも雪が降ったとか。皆さんのお住まいの地域は如何だったでしょうか?こちらアメリカも、21〜23日と3日間に渡って記録的な大雪となり、私が住むバージニアも70cm近い雪が積もりました。ちなみに雪については本当に、アメリカは潔くて素晴らしいと思うのですが、積雪で道路状況が悪くなればすぐに安全のため学校も会社もお休み。止んだ後ですら、完璧に除雪がされた状態になっていなければ太陽が出ていてもお休み。21日から始まるはずだった私の英語学校も、現在、何と29日金曜日まで休校というメールが来ています。例年なら、市から委託された除雪業者が、降りだした直後から除雪車を走らせ次の日にはほぼ完了、路面凍結の可能性を考えて念のため1日お休みになる程度なのですが。今回ばかりはその量が多すぎて追いついていない様子。ただ日本人の感覚からすると、いくら何でも9日間休校とは休み過ぎでしょー! と思ってしまいますが。

そんな大雪が来るちょうど前日に、タイミング良く取材が出来た今回のUSA JOURNALは、アメリカのアンティーク雑貨について。日本でも人気があり、勿論ここアメリカでも多くのコレクターがいるアメリカのヴィンテージ&アンティーク雑貨。実は正直、最初はあまり興味の無かった私。ただ最近お友達の家に遊びに行った際、本当に素敵な食器でお茶を出してくれたので尋ねると、アンティークショップで集めた品だとのこと。アンティーク雑貨と一言に言っても、その時代や背景によって同じブランドでも色や柄など様々な種類があり、何軒も廻って心に刺さる1品を見つける。そんな魅力を聞いて、私も徐々に興味が湧いてきました。そこで今回、IIDAの取材も兼ねて、是非1度アメリカンアンティークの世界を覗いてみよう!ということで、コレクターのお友達にお願いをして、お隣のメリーランド州にあるショップ3軒を巡るツアー&ガイドをお願いしました。

本当に何の知識も無い私は、当初、自分が住んでいるこの辺にも沢山のアンティークショップがあるのだとばかり思っていたのですが、規模が大きく、また比較的安く品が手に入る大型アンティークショップの多くは、かなり田舎の方に多く点在しているとのこと。今回行ったお店達3軒も、1時間半近く延々と両窓に牧場地やコーンフィールドを望みながら車を走らせ、やっと現れた小さな古い街の中にありました。

今回行った3軒は、どのお店も、個人の売り手にそれぞれ区切られた販売用ブースを貸し出している形態。フリーマーケットやギフトショーの様な感じ、と言ったら分かりやすいでしょうか?各ブースは全部売り手が違う為、置いてある商品も様々。女性に人気の高い食器類を中心に置いているブースもあれば、コカコーラなどの販促商品のアンティークを置いているブース、更にはノコギリやカナヅチなどの工具のアンティークが所狭しと置かれているブースもありました。スミソニアン博物館に置かれていても何らおかしくない価値あるものも多くある一方で、中にはどう見てもガラクタとしか思えない様な、商品としての限界を超えているような(笑)ものが置かれているブースも。ただ何が宝物になるかは人それぞれ。むしろそこから自分だけの宝物を探すというのが、マニア心をくすぐるのかもしれません。

3軒廻ってすっかりアンティークを楽しみ、いくつかお気に入りも見つけた私ですが、帰宅後そのブランドや歴史について自分でも調べてみて、更にその奥深さに感心。アンティーク素人の私の即席情報ですが、少しでもその面白さを感じて頂く為、人気のある代表的なアンティーク品とその背景を少しご紹介します。

●ファイヤーキング(アンカーホッキング社)

1937年、アメリカ オハイオ州ランカスターにて誕生したアンカーホッキング社。1942年、耐熱強化ガラス商品としてファイヤーキングの生産を開始しました。ミルクガラスの暖かな風合いや、ジェダイと呼ばれる代表的なその美しいグリーンの色合いにファンも多く、日本でも人気のアメリカのカリスマ主婦、マーサ・スチュアートもこのファイヤーキングのコレクター。彼女が料理番組でその食器を使ったことも、さらなるブームのきっかけとなったのだとか。製品裏の刻印も時代によって少しずつ変化しており、そのフォントや形状によって、おおよその製造年が予測出来るとのこと。会社自体はその後も大きく成長し現存していますが、このファイヤーキングは現在既に製造・販売が終了。そういった様々な背景が、製品自体の美しさと共に、よりレア感を感じさせ魅力を高めているのかもしれません。

●オールドバイレックス(コーニング社)

鉄道信号の耐熱色ガラスや、エジソンの白熱球供給もしたと言われる老舗ガラスメーカー、コーニング社。1851年の創業当時から様々な用途のガラス製品を製造していましたが、1915年その技術を応用し、家庭用キッチン用品としてのパイレックスシリーズを発売しました。オーブンにも電子レンジにも、また冷凍庫や冷蔵庫にも使える、丈夫な耐熱ガラスのパイレックスはたちまち人気となり、アメリカのキッチンには無くてはならない存在となりました。ちなみにパイレックスは現在もキッチン用品ブランドとして新商品も多く出されていますが、1940〜1970年代に作られたものがオールドパイレックスと呼ばれ、その懐かしさを感じるデザインや斬新な色使いが、多くのアンティークファンを魅了しています。

●ロンガバーガーバスケット(ロンガバーガー社)

1976年、手編バスケットメーカーとして、オハイオ州ドレスデンの工場からスタート。貧困の中育ち、学習障害や吃音というハンディも背負っていた創業者デイブ・ロンガバーガーですが、その類まれなる商才と、従業員との信頼関係を一番に重要視した経営方針で、2000年時点で年商10億ドルの大企業に成長させアメリカンドリームを手にしました。アメリカではこの成功の物語は広く知られており、これもまた商品の魅力へと繋がっています。丈夫で使いやすいロンガバーガーバスケットは、年代物のアンティーク品だけでなく、近年に製作されたものでも非常に人気が高く、全てが手作りで1点ものであることや、毎年様々なアニバーサーリー限定品が発売されることも、コレクターの心を掴む要因の一つとなっています。
ちなみに私が今回購入したグリーンのミニバスケット。1999年3月17日のセントパトリックスデー(アイルランドにキリスト教を広めた聖人聖パトリックの命日)に亡くなった創業者への敬意を込めて、その後毎年その日に発売される緑色のアニバーサリーバスケット。(アメリカではセントパトリックスデーは緑色を身につけて祝う日とされており緑のクローバーは祝日のシンボルとされています) 私の購入したものはクローバーと2009の刻印がされた、2009年のアニバーサリーバスケットでした。そんな背景は全く知らずに購入したのですが、レジで店員の女性が 「これ素敵よね」 とその話を教えてくれ、そんなやり取りの中から品々の裏にある素敵な物語を知るのも、またアンティークの魅力だなぁと改めて感じました。

全てのブランドについて書いていたら来月号にも渡ってしまいそうなくらいの様々なアンティーク品の数々。あとは写真があるもののみ簡単にご紹介しますが、こうして歴史や背景を知った上で探索したらもっともっと楽しめそうなアンティークショップ巡り。また何も知らずとも、色や形がただ好きで気に入って買ったものが、実は何かのアニバーサリー品であったり、歴史的背景を色濃く反映した製品であったり。そしてそれが何十年も前にアメリカで誰かに購入され、アメリカの家庭を見てきたそれらの品々が、また長い年月を超えて今、自分の手に渡ってきたと思うと、何だか壮大なロマンも感じ、愛着が湧いてくる…。そんなアメリカンアンティークの世界。ハマってしまったらお金が…!なんて思いつつ、帰国までにもう一度くらい、素敵な出会いを探しにショップ巡りをまたしてみたいなぁと思っている今日このごろです。

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