会員の視察・旅行記
Interior travel diary/インテリア旅日記「初夏の京都編 フォーシーズンズホテル京都」
梅雨入り直前、まだ爽やかで過ごしやすい旅日和の6月初旬、2泊3日で京都を旅しました。建築やインテリアを仕事とする気のおけない女4人旅。歴史ある建築と庭園、最新のホテルなどこの旅で刺激を受けたデザインについてご紹介します。
【桂離宮・修学院離宮・瑠璃光院】
今回の旅の目的の一つは桂離宮と修学院離宮の見学。私自身は3度目ですが、初めての友人のために皇居で予約を取って訪れました。青葉の美しいこの季節に来るのは初めて。庭園と建物のコントラスト、襖や引き手などのデザインの妙を三度見ることを楽しみに訪れました。またこの時期ちょうど春の特別拝観を行っていた瑠璃光院にも。ここでは大きな一眼レフのカメラを持つ若い女性があまりに多いことに驚かされました。いわゆる「インスタ映え」狙いの参観者でしょう。せっかくの機会なので写経していきたかったのですが、あまりにも混んでいて断念。秋の特別拝観の時期にもう一度訪れてみたい場所です。
【フォースーズンズホテル京都】
昨年秋にオープンしたフォーシーズンズホテル京都に宿泊。三十三間堂から徒歩数分の好立地でありながら、ホテル周辺は静かで落ち着いた雰囲気。静かで控えめな竹のアプローチに始まり、茶室も要した歴史ある日本庭園「積翠園(しゃくすいえん)」を望むメインダイニングなど、敷地の高低差を生かしたダイナミックな吹き抜けを持つ空間構成。見所の多いホテルです。スパやエステルームも充実した作りでリラックス出来、客室は和の文様と美しい差し色が魅力的。ホテル側のご好意で1室空きがあったスイートルームも見学させていただきました。木目の美しい壁面と組子を取り入れた造作棚。高さのあるレザーのベッドヘッドボードと水彩画タッチの和紙風壁紙の組み合わせ。和紙のシェードの照明など、和を感じる素材を適度にポイント使いし、バランスよく構成しています。標準的な客室でも食事が取れる大きさのテーブルやソファを配し、49平米以上の広さを確保。ゆったりと過ごせる空間に。床には板張り、タイル、カーペットがシーンごとに貼り分けられ、色鮮やかな和の文様や絵画のようなグラデージョンが美しいオリジナルカーペットが使用され印象的。クッションや椅子と同色にしてカラーコーディネートする工夫も見られます。バスルームの動線もよく考えられており、シャワーメインの外国人客も、浴槽と洗い場を分けたい日本人客もガラス戸の開閉で2つの使い方が選べるよう工夫されています。
このホテルのもう一つの特徴は、春や秋のハイシーズンでも泊まれるよう分譲タイプの客室があること。その客数は全体の約3割を占め、富裕層ニーズに応えています。その分譲タイプの宿泊客などが使用するサブエントランスが客室エリアの中間にあり、ソファ席の床には麻の葉などの日本の伝統文様を複数パッチワークしたようにデザインされたオリジナルカーペットが敷かれ、エルメス製の人力車が飾られるなどのオリジナリティある和のデザインの演出が見られます。
人気の旅館やホテルでは茶器や茶菓子のセレクションにも一工夫ある場合が多いのですが、このホテルでも京都という立地を意識した美味しい日本茶と茶菓子が準備されています。空間には日本の吉祥文様や和紙、西陣織などの素材をアクセントとして使用し、見る人の目に自然に日本の伝統と美が映るようプランニングされています。和のデザインの美しさを随所に取り込むことで、もてなしの心が伝わってくるホテルデザインになっています。
text & photographs 細井絵理子