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会員の視察・旅行記

Interior travel diary「オランダ視察ツアー2018 Part1 建築編 ① アイントホーフェンの建築」

2018年10月19日より6泊8日の日程でIIDAオランダ視察ツアーが実施されました。
IIDA日本支部企画としては初めてのオランダ。そして参加者の多くが初のオランダ訪問という初めてづくしの旅。
当初は手探りだったDutch Design Week(以下DDW)の情報収集に始まり、企業訪問、デザインホテルの視察や宿泊など、関係各所にご協力いただきギリギリまで内容調整を図りました。
結果、未知なるDutchDesignの魅力を体感できる視察先が目白押しとなる濃密なオランダ視察ツアーが実現いたしました。
そのツアーレポートは、とても一人の書き手では全容をお伝えしきれないと考え、参加メンバーによるリレー方式でテーマ毎にお伝えいたします。
書き手が変われば視点も変わる。様々な角度からのオランダの“今”の情報をお伝え出来るのではと思います。
その第一弾として、今回は私、細井絵理子がユニークなオランダの建築についてレポートいたします。

【建築編 ① アイントホーフェンの建築】

アイントホーフェン(Eindhoven)はオランダ南部にある工業都市でDDWの開催場所です。
また著名なデザイナーを数多く輩出しているデザインスクールDesign Academy Eindhovenがある街でもあります。
第二次世界大戦で焼け野原となったこの街には古い歴史的建造物はあまり残されておらず、復興後に新しい建物が作られています。
また、この街には世界的電機メーカーであるフィリップスの本社があり、その関連施設から視察はスタートしました。

[EVOLUON]

まるで巨大な円盤状のUFOが広場にどーんと着陸したかのような『EVOLUON/エフォルオン』。
中心地から少し北に外れた交差点に突如として現れるこの巨大な建物は、1966年建造と聞いて妙に納得。
なるほど、私が子供の頃に観たSF映画やアニメの未来都市のモデルのようです。
どこか懐かしい、でも斬新、そんな第一印象を持ちました。
1966年、フィリップス社が建造。建築設計はLeo de BeverとLouis Christiaan Kalff。現在はアイントホーフェン市に寄贈されています。
元は科学博物館で、現在は会議室などを有するカンファレンスセンターとなっていて、現在でもイベントなどが行われています。
コンクリート製でその美しいフォルムは近くで見るとまた興味深く、これを建設当時に見た人々は興奮したであろうと想像できました。

[VAN ABBEMUSEUM]

街の中心地を流れる小川に寄り添うように建つ『VAN ABBEMUSEUM/ファン・アッベ美術館』。
正面から見た姿は、古い伝統的な煉瓦造りのシンプルで小ぶりな佇まい。
しかし、湾曲した小川に沿って裏手に回ると近代的な変形キューブ状の構造体と一体化された近代的な建築になっています。
創設者でありこの美術館の主要なコレクションを所蔵していたのは、タバコ(葉巻)事業で成功し、
且つ著名なアートコレクターだったアンリ・ヤコブ・ヴァン・アッベ。
美術館として1936年創設。建築設計はAlexander Kropholler。
2000年代に入り拡張工事が行なわれ、背部に近代的建築が増築されています。その設計は Abel Cahen。
ピカソやカディンスキーの作品を所蔵し、展示されています。    

[Philips Museum]

駅にも近い中心地に位置する『Philips Museum/フィリップス美術館』
こちらもVAN ABBEMUSEUMと同じく古い建物と近代的なガラス張りの建築部を併せもつハイブリットな建築です。
駅前から続く人通りの多い商店街のような細めの道筋に沿うように細長く伸びたガラスのファサード。
中は小振りながらフィリップスの製品の歴史やデザインに対するコンセプトがわかりやすく展示されています。
個人的に興味深かったのは最新医療機器の解説エリア。
日本でもフィリップスの医療機器(MRIなど)は医療業界では有名ですが、それらを小さな子供が楽しく学べるミニチュア展示があったこと。まるで小さなキッザニアのよう。
また、ARなどを組み合わせた最新の展示方法で近未来のテクノロジーを体感するコーナーもありました。
ライフスタイルの中でフィリップスの家電が果たす役割を様々な住空間シーンで再現展示し、家電とは、機能だけではなくデザインが果たす役割も重要だと明確に。
ここが日本の家電メーカーとの違いだと感じました。  

[THE STUDENT HOTEL EINDHOVEN/ザ・スチューデント・ホテル アイントホーフェン]

スコットランド出身の起業家Charlie MacGregor(在アムステルダム)が設立した学生と企業家などがコミュニケーションできる新しいスタイルの宿泊施設。
アイントホーフェンの駅前広場に一際高い建物としてすぐ目に入ります。
最新かつデザイン性のある設備、共有スペース(ジム、ランドリー、バー、カフェ、ゲームエリア、ミーティングスペース)を有し、客室には中長期の滞在に便利な様にコンパクトながら機能的なキッチンが付いています。
本や小物も置ける黒板を模した様な棚が壁面を装飾し、アパートメントの様に住むことが出来る造り。
もちろん旅行者や出張で訪れたビジネスマンも宿泊出来、様々な人が共有スペースで触れ合うことで、新しいビジネスやムーブメントが生まれることを狙うコンセプトになっています。
オランダは学生向けの賃貸物件が極端に少ないらしく、大学に受かっても住まいが見つからず入学出来ない場合もあるとか。
そんな潜在的ニーズとともに新しい創造的交流空間を目指し作られた大変ユニークな施設です。
オランダ国内はもとよりパリなどにも進出し、現在11箇所に展開中。    

text & photographs 細井絵理子

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