会員のお仕事
Designer’s House / Designer’s Project
デザイナーの住まい・仕事 vol.2
額縁が似合う家 U邸 第1回
IIDA Japan Chapterメンバーの住まいや手がけた物件を紹介するDesigner’s House/Designer’s Project。
第2回目は、城下町小田原にあるU邸をご紹介します。
text & photographs: Eriko Hosoi
photographs : Keiko Ushiyama
東京から新幹線に乗って40分弱。「小田原は近い」と改めて感じながらU邸に向かうと大きな桜の古木が目の前に。小田原城を近くに望むその場所にU邸はあります。築50年近く経つ店舗付き住宅を改装して約10年。アメリカやヨーロッパの文化に親しんだご夫婦ならではのインテリアがそこにはありました。
設計・デザインはU氏のご主人でもあるM氏との共同設計
美しい住まいとは
U邸を訪れてまず感じたこと。それは自分らしく美しく住まうということ。
ご夫妻の素敵なライフスタイルが滲み出たインテリアに触れ、改めてそのことを考えました。住まいに対する愛情とプロとしての知恵や技がさりげなく散りばめられたU邸を3回に分けてご紹介します。
築年数にすると50年近くが経つというその建物には、年輪を重ねた家が持つ独特な落ち着きと佇まいがあります。以前の持ち主が増改築して店舗付き住宅となった建物をスケルトン状態にして大改装したのが約10年前。工事が終わりオープンハウスの日に訪れた以前の家主はそのあまりの違いに本当に驚いたとか。光が差し込まない暗い廊下と細切れにされたような複数の和室。典型的な古い日本の住宅の間取りだったその家が、今では日本にいることを一瞬忘れてしまうような落ち着きのある西洋スタイルに生まれ変わっています。
まずは玄関。いわゆる“たたき”はありません。靴を履いたままの生活スタイルなので扉を開けると椅子や書棚が配されたホールになっていて来訪者を迎えてくれます。そして上階に伸びる白い手すりが印象的な階段。TOPライトから差し込む光が柔らかく階段越しにホールを照らします。どの部屋も開口部は決して大きくはありません。以前からあった窓を塞いだり小さくすることでデザイン性やプライバシー、収納を確保している分、改装後の壁面の開口面積は減っています。しかし、TOPライトを3カ所設けて採光を確保。太陽の動きや天候と共に部屋に差し込む光の表情がダイレクトに変わる天然の照明は、アンティークの家具が配されたリビングやキッチン、バスルームをやさしく照らします。開口部を大きく取り、外との境を極力排除した開放的な住まいがある一方、U邸は、外と内の世界をある意味しっかりと隔てることで、住まいの個性をより際立たせる方法があることを改めて教えてくれます。出窓があった場所に額装した扉をつけて収納にするなど、リフォームだからこその工夫も随所に。
次回は『リフォームとDIYの知恵袋』をお送りします。
建物外観
エントランスホールの一角
椅子に書棚、額や鏡、フロアスタンドが並び小さなサロンのよう
二階の居住スペースに続く階段
廊下のTOPライト
壁の塗装色は淡いサーモンピンク
リビングスペース
ダイニングスペース
元あった壁や建具を取り払い、LDKを大きな一つの空間に
オープンスタイルのオリジナルキッチン
ここにもTOPライトがあり、気持ちのよい光が差し込む
廊下の光をキッチンに取り込む開口部
実はこれ大きな家具などの搬入搬出用経路にもなるよう考え設置されたもの
リビングのソファーコーナー
壁の4つの額絵ならぬ隠し扉。
元は出窓だったところに手を加え収納に。額絵はその扉になっているという仕掛け。古いヨーロッパの建築の絵(元はカレンダー)が入っている。
寝室の開口部
プライバシー確保とデザインバランスを考え、元あった引き違い窓からハイサイドライトに変更
収納たっぷりのオフィススペース
元の古い窓形状が唯一残る場所